time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
どうして気付かなかったのだろう……
浅葱の異常なまでのお金の使い方に“浅葱”という名。
一度は、浅葱コーポレーションではないかと疑っても良かったはずなのに……
あたしは本当に自分のことしか考えていなかったんだと改めて実感する。
見ようとすれば見えていたことなのに。
「俺は兄さんに離婚を進めた。兄さんまでもが完璧に狂ってしまうまえに、浅葱家を離れることを提案したんだ。」
でも、浅葱から返ってきた言葉は意外なものだった。
スナック繋がりで文ちゃんが浅葱のことを何か知っていたら、浅葱へと繋がる手掛かりになるかもしれない。
……と安易な気持ちで切り出した話が、こんな内容になるなんて。
あたしはこぼして空になったグラスに手をかけた。
何かしていないと、聞いていることに耐えられそうもなくて。
「兄さんは姉さんに脅されていた。浅葱家を捨てるようなことがあれば、マスコミに写真を送り付けると……」