time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
その写真とは浅葱とお姉さんとの夜の営みの写真。


手足を縛られたり、変な衣裳を着せられたり……


想像しただけで鳥肌が立ってくる。


写真の話を聞いたあたしは過去の記憶とリンクした。


あたしにお店のドレスを着せて、写真を撮ったあの夜。


浅葱は何を思って、あの夜を過ごしたのだろう。


自分がされてきた屈辱を思い出しながら、何を考えていたのだろう。


「政略結婚をしたくらいだから、兄さんの実家も大きな会社で……そんな写真をばらまかれたら、実家にも迷惑がかかる。兄さんはそれを恐れていたんだ。」


やはりお金は恐ろしい。


“金”一つで一人の人生を……


いや。


多くの人の人生を変えてしまうんだから。


「俺はそんな兄さんを見ていられなくて、スナックへと連れてきた。少しでも兄さんの気持ちが楽になればと思って。」


「そうだったんだ。」


物凄く重たい話を聞いたのに、あたしの口からは在り来たりな言葉しか出てこない。


「じゃあ、あたしの前から姿を消したのはお姉さんにばれたからなのかな?あたしは探さないほうがいい?」


「兄さんが姿を消したのはカナの前からだけじゃない。」


どういうこと?と聞こうとした瞬間、文ちゃんは立ち上がりカウンターの中へと入っていった。
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