time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~

「着く前に行っておくが……」


「あっ?」


前置き的にいい話ではなさそうだ。


俺は無意識に身構える。



「電話で聞いた感じでは、俺には力になれそうにない。」


「どういうことだよ?」


「俺だって所詮雇われの身だ。」


そう言った秀は見たこともないような、冷たい瞳で俺のほうをチラリと見た。


「だから、豊の相談相手に的確だと思った人の所へ連れて行く。」


「それって……」


「車の中で暴れんじゃねぇよ。こうでもしないと、豊を連れ出せねぇ。」


「羽目やがったな。」


「俺を信用した豊が悪い。」


一瞬、暴れてやろうかとも思ったけれど、秀の言っていることは正しい。


俺は大人しく見慣れた窓の外の景色に目をやった。
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