time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「大人になったのか?」
「あっ?」
まんまと羽目られたことに苛ついた気持ちを、押さえようと必死な俺に横からからかうような言葉をかけてくる秀。
「昔のお前だったらキレてただろ?」
「そうかもな。」
確かに数年前までの俺なら、大人しく車に乗っていることはないだろう。
「歳を重ねると諦めが早くなるよな。」
「あぁ。」
「俺は昔のキレやすい豊も好きだ。」
「お前に好きだなんて言われても嬉しくねぇよ。」
「ハハッ。確かに。俺も人のことは言えねぇ。なんでも簡単に諦めちまう。」
淋しいよな。と俺は心の中で呟いた。
望んでこうなったわけじゃない。
でも、自然と諦めているんだ。
諦めてはいけないと思っていた大切なことまでも……