time～元暴走族豊×キャバ嬢カナ～

「心配してたって言っても、秀から話は聞いていたんだけどな。それにしたって、面見せなさすぎだろ。まぁ、今日来たから許してやるけども。」


俺の前を歩きながら、相槌を打たしてくれないほどの勢いで話を始めてしまう。


こういう所を見ると、姉貴の旦那なのだと実感する。


俺の姉貴はこの何百倍も騒がしい。


「まぁ、座ってろ。」


「はい。」


昔、よく来ていた部屋に通された俺は何一つ変わっていない室内に懐かしさを感じていた。


「元気なんだろ？」


「元気です。一志(ｶｽﾞｼ)さんは？」


「この通り、代わり映えしねぇよ。」



缶ビールをテーブルに置いた一志さんは、手を広げながらドスッとソファーに腰を下ろした。


「色々と聞きたいことはあるが……口煩い兄貴にはなりたくねぇからな。今日はお前の相談の話だけにしておいてやる。」


あの頃とまったく変わらない口調。


けれど、あの頃よりも確実に大きくなった威圧感。


「姉貴は？」


「会いたかったか？」


「まったく。」


「だろうな。そう思って、今日お前が来ることは言っていない。」


「助かります。」



姉貴は本当に騒がしい。


この場にいられたら、五月蝿くて話しどころではないだろう。