time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「話を戻すけど、俺の話がお前のためになるかはわからねぇ。」
「はい。」
「俺は経営者としてもやっているが、何せ日の当たらない場所で生きている。お前達、堅気の奴とすべてが同じってわけではないからな。」
若頭に堅気……
そんな言葉を聞くと、一志さんや秀が遠い存在に感じてしまう。
あの頃はそんな境界線を感じたことなどないのに。
「俺は……古くて何が悪いと思ってるぞ、豊。」
「は?」
「親父さんが貫いてきたやり方が悪いから儲からないとは思わない。儲かっていた時期もあるだろうが。」
「それは……昔の話で、今は時代が違う。いつまでも昔に儲かったやり方にこだわってたら、潰れるとしか思えない。」
一志さんはわかってくれるんじゃないかって思っていた。
俺とそれほど歳の変わらない一志さんが親父よりの考え方だったとは……
「ガッカリしたか?」
「えっ?」
心の中を読まれた俺は、明らかに動揺してしまう。
「顔にガッカリだって書いてあるぞ。」
「…………」
そう思いましたなんて言えない俺は一志さんから視線を逸らし、黙り込むしかなかった。