time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「なぁ、豊。お前はヘブンやってた頃、それが古いと思っていたか?」
「まったく。」
「じゃあ、今の時代に暴走族やってることは古いと思うか?」
「それは……難しいっす。古いとはよく耳にするから。」
「そうだな。でも、古いと言われて、それに同調できないだろ?」
「そりゃ、勿論。俺には今でも大切な……」
ヘブンは俺が唯一胸を張れるもの。
あの頃だって“暴走族”といえば聞こえのいいものではなかった。
けれど、俺はそこで見たことを大切にしたい。
そこで感じた気持ちを一生忘れずにいたい。
それが古いと馬鹿にされようとも。
「親父さんも同じだよ。時代が変わったことも、古いこともわかってる。でも、大切なものを失いたくないんじゃねぇのか?」
「…………」
親父にとっての工場は、俺にとってのヘブン。
「新しいものを取り入れることも必要だ。けど、古いからといって捨てちゃいけねぇものもある。」
「……はい。」
「俺は潰れかけても、そこにこだわる親父さんはカッコいいと思うぞ。それに……」
俺は一志さんが話している途中で言葉を被せた。
一志さんの話を聞いているうちに熱くなってしまって。
「でも、俺は大切なものなら、尚更潰したくねぇんだよ……」
体は熱くなっているのに、それとは裏腹に力のない声が出た。