time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「じゃあさ、産まれてきて良かったかどうか考えてしまうってことは親のせいじゃないと思う?どんな親でも自分次第ってことなのかな?」


あたしは「そうだ」と言って欲しかった。


だから、敢えてこんな聞き方をしたんだ。


子供の幸せは親とは関係のないこと。


そう断言してもらえれば、あたしは産む決心がつく気がして……


「違うな。」


でも、文ちゃんはあたしの欲しい言葉をくれなかった。


「カナ……。」


切なくなるくらい、優しくあたしの名前を呼んだ文ちゃんはあたしの返事を待たずに言葉を続ける。


「言い訳を作ろうとしちゃダメだ。」


わかってる。


文ちゃんにあたしの言葉を肯定してもらった所で、あたし達の未来が保証されるわけじゃない。


そんな覚悟じゃ、いけないってことはわかっている。


でも、誰かに背中を押してほしかった。


「大丈夫だ」と言って欲しかった。


まだ、何も話していないのに、あたしの言いたいことも、あたしの状況もわかっているかのように言葉は続けられる。
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