time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「俺は親を憎んだよ。どうして俺を産んだんだと怒りで、気が狂いそうだった。いや、気が狂っていたんだろうな。」
苦笑いをした文ちゃんは突然、腕時計を外し、着ていたシャツの袖を捲り上げた。
「それ……」
あたしは思わず、両手で口を覆ってしまう。
「未来が見えなくて、現実を受け止められなくて、消えてしまおうと思った過去がある。」
そう言いながら、あたしの前に差し出された手首には深い傷跡が……
自殺未遂。
「文ちゃん。」
文ちゃんの過去がどれほど辛いものだったのかは、あたしにはわからない。
ただ、消えない傷跡を作るほど苦しんだ過去をあたしなんかに曝け出してくれたことに涙が零れそうだった。
喉の奥が熱くなる。
「俺があの両親の元に産まれなければ、こんな想いはしなかったかもしれない。だから、親と子供が関係ないとは言いきれないんだ。少なからず、子供は親に影響されて育つのだから。」