time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
荷物を持ったまま居間へ行こうか、一旦自分の部屋に行こうか迷っていた。
居間には親父がいるはずで……
何から話を切り出せば良いのか、頭の中が混乱していた。
そんな、俺の気持ちを察したのか、母さんの言葉に緊張感はすっかりと解けてしまう。
母親の持つ力とはすごいものなのかもしれない。
荷物を置いた俺は、大きく息を吸ってから居間の扉を開く。
すると、鼻を掠めるコーヒーの匂い。
親父は定位置でテレビを見ている。
「豊もソファーに座って。久しぶりにみんなで飲みましょう。」
母さんはコーヒーを3つお盆にのせて、俺を誘導してくれる。
本当に有難い。
L字型に置かれたソファーに腰を下ろした俺は、親父の横顔を見つめる。
俺がいることに気付いているのだろうけど、そんな素振りは見せやしない。