time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「帰ってきたのか?」
コーヒーを半分くらい飲み終えた頃、それまで静かだった空間に親父の声が響いた。
「帰ってきてもよければ、帰ってきたい。」
意地を張らずに、一志さんの言葉を思い返しながら、俺は真っすぐに親父を見つめた。
「お前の家だ。好きにすればいい。」
一切俺の方は見ようともしない親父の横で、微笑みながら頷く母さん。
「それと……もう一度、工場で働かせてもらえないか?」
「それは、」
駄目だと言われるのは承知の上。
親父の言葉を遮るように俺は喋り続けた。
「わかってる。他の社員の手前、俺だけを優遇できないことも。親父は自分のやり方を変える気がないことも。アルバイトからでもなんでもいいんだ。もう一度チャンスが欲しい。」
俺は膝に頭を擦り付けるように、深く頭を下げた。
「頭を上げろ。」
親父の言葉は聞こえていたけれど、動こうとしない俺に、
「話ができないから、顔を上げろ。」
と少しだけ大きくなった声が頭の上からふってくる。