time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
ゆっくりと顔を上げると、親父と視線が絡み合う。
親父ってこんな目をしていたんだと、初めて思った。
決して、大きくはないが力強い眼差し。
何かを見透かすような鋭い目付き。
「あんな啖呵を切って出ていっておいて、どういう心境の変化だ?」
「大切なことに、大切な奴らが気付かせてくれたんだ。」
俺はこの時、お前の顔を思い出していた。
「結婚したい奴がいる。」
「まぁ。」
と両手で口を覆う、母さんは驚いてはいるが嬉しそうに身を乗り出した。
「そのためにも、俺は親父の傍で働きたい。本当に大切にしなければいけないものが何なのかやっとわかり始めたんだ。」
伝わっているだろうか?
俺の想いを親父に伝えたいけれど、こんな風に向き合ったことのない俺は、上手い言葉が見つからない。
「豊?もしかしてカナさん?」
「あぁ。」
母さんは親父の膝の上に手を乗せ、
「良かったわね。」
と涙ぐんだ。