time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「カナさんは元気?」
「今もこの辺に住んでるの?」
などと母さんは嬉しそうに1人で話していた。
俺は適当に相づちをうつだけで、母さんの話など耳に入ってこない。
それは、その横で黙り込んだ親父が気になって仕方ないから。
「豊!聞いてるの?」
「あっ?」
「近々、カナさんを連れてきて頂戴。会いたいわ。」
「わかった。」
カナを連れてくるということで、母さんは満足したのか、やっと話すのをやめた。
その途端に静まり返る空間。
俺は親父の言葉を待っていた。
母さんが話すのを止めれば、口を開いてくれると思っていたのだが……
10分たっても、20分たっても、一向に口を開こうとしない。
それどころか、俺に向けられていた視線はテレビへと移され、話をする気があるのかどうかさえわからない。