time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「もしもし。カナか?」
いつもは冷静な秀がかなり取り乱していることに、胸騒ぎがした。
電話を握る手に力が入る。
「総合病院まで来い。」
「な、なんで?」
「豊が……事故った。」
そう言われた瞬間、真っ白になった頭の中。
それからのことは余り覚えていない。
無我夢中で豊のいる病院へと向かった気がする。
手術中と書かれたランプが点灯しているのを見つめながら、何度も何度も後悔した。
どうして、もっと豊と向き合わなかったのか。
昔のように、納得がいかないのなら、とことん問いただすべきだった。
豊が何を考え、何を感じているのか知るべきだったんだ。
こうなってしまうなら……
あの時、どうしてあたしは見て見ぬ振りをしたんだろう。
そして、あたし達の間に授かった大切な命をまだ、豊に伝えていない。
どんな顔をされるのか不安だったけれど、今となってはそんなことどうでもいい。
ただ、豊に伝えたい。
命を授かったことを……
そして、あたしは産む決心をしたということを……
豊に会いたくて、会いたくて。
どうしようもない自分を攻めることしかできなかった。