time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
俺は意地を張っているわけではない。


突然、離れて行ってしまったアイツに意地なんて張ってない。


ただ、怖いだけだ。


自分からアイツを掴まえに行く事を躊躇しているだけだ。


アイツに本当の別れを告げられることが、怖くて怖くて……


俺は3年間も何もできずにいたんだ。


意地を張っていられるほど、俺は強い人間じゃねぇよ。


ブーブーブー



アイツの事を忘れる事もできない臆病な自分に嫌気を差しながら、ポケットに入っているPHSを取り出した。



送信相手は翔。


“ヘブンの総長豊はいつでもカッコ良くいてくれ”


馬鹿な奴。


でも、その言葉が心の底に染み渡っていくのがわかる。


俺は高校時代、暴走族の総長をやっていた。


何で俺が総長に選ばれたのか……


それは今になってもわからない。


チーム名“HEAVEN”


あの頃の俺にはこのチームがすべてだった。


< 57 / 398 >

この作品をシェア

pagetop