time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
怖くてたまらなくて……


逃げていた事にこうも簡単に踏み出す勇気が沸いてきたのはただの気まぐれなんかではない。



変わらずにいたいと思ったんだ。


世の中に順応するために変わっていく事を否定するわけではない。


それはそれで正しい選択だと思うが、俺は変わりたくない。


高校時代に馬鹿やって、感じた気持ちをいつまでも持ち続けていたい。


そう願ったって、人は知らないうちに変わってしまうもの。


それならば、自ら変わろうと努力なんかしたくない。


俺は、あの頃の俺を大切にしてやりたい。


そのためにはアイツが必要なんだ。


アイツが隣にいてくれなければ、俺は俺でいられない。



高校生活の殆どをアイツと過ごしたせいか、色褪せていく青春時代が懐かしかったせいか、この時の俺は何かに取り付かれたようにアイツを求めていた。


アイツの事を受け止めてやれる器などこれっぽっちも持ち合わせてはいなかったのに……
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