time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「着いたぞ~」
シャワーを浴び終え、着替えをしていると一階から翔の声が聞こえてくる。
「いらっしゃい。豊、翔君よ」
言われなくたってわかっているのに、わざわざ母さんが俺を呼ぶ声に少しだけイラつきながら階段を降りた。
いつものように愛想を振りまく翔に嬉しそうに答える母さんの声。
「行くぞ」
足を止めずに母さんの横を通り過ぎた俺は翔の肩を掴んだ。
「豊。ご飯は?」
答える気にもならない母さんの言葉。
きっと母さんが悪いわけじゃない。
でも、優しく返事をしてやることは出来ないまま、俺は家を出た。
閉まりかかった玄関のドアから、翔がフォローをしてくれる声がかすかに聞こえて、ほっとしている自分が馬鹿馬鹿しい。