time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
お風呂から上がるとあたしが一番初めにすること。



それは口にくわえた煙草から真っ白な煙を吐き出すことだった。



これで体の中も浄化されていく。



この銘柄の煙草を吸っている時点であたしは何もかもあの頃に固執しているんだろうな。



あの頃のまま心は取り残されてしまって、体だけが今を生きている。



この煙草を右手の人差し指と中指に挟むたびにそう思うのに、煙草をやめることも銘柄も変えることも出来ないあたしは今を刻んでいけない。



時計の針は確実に時を刻んでいるけれど、あたしの心は時を刻んではくれない。



ソファーに浅く腰掛けながら天井に上がっていく白い煙を見ていると、ある一定の高さに達すると消えてなくなってしまう。



消えてなくなってしまうんだ。

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