time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「豊ちーん」


さっきから頭の上では翔の声が聞こえている。


きっと馬鹿面をして、俺の顔を覗き込んでいるに違いない。


「ゆ、ゆ、ゆーたかちん」


うるせぇ。


無視して二度寝しようと思ったけど、こんなんじゃ眠れやしねぇ。



「もう昼ですよぉぉぉぉ」



「うるせぇな。勝手に上がりこんでるんじゃねぇよ」


俺は勢いよく体を起こすと、翔がニタニタと笑いながら満足そうな顔をしている。



「だって、お母様が入れてくれたんだもの」


人差し指で床をいじりながら、何かの演技をしているが、それがなんなのかさえわからない。



「何か用かよ?」



あえて翔の行動には触れずに話を進めた。


「昨日の事、聞きたくて。お前は電話に出ないしよ。わざわざ来てやったんだ」



「話すことはない」



俺が今一番触れられたくない事をこの男は抜け抜けと……


しかも、お前が口にするまで昨日の出来事を忘れてたっていうのに。
< 93 / 398 >

この作品をシェア

pagetop