国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「おばあさんは君より軽傷とは言え、高齢だからまだ動けない」

「……ジョシュは」

「彼はエラの実家に泊まっている。明日やってくるだろう」
 
外は薄暗くなってきており、もうすぐ夜のとばりがおりる。

「ルチアさん、サファイアのペンダントの事ですが……」

 ユリウスのそばにいたジラルドは一歩ベッドに近づきルチアに声をかけるが――

「ジラルド、今はやめるんだ。痛みに苦しんでいるのがわからないのか?」

「そうでした。またの機会に」
 
ジラルドが部屋を出て行き、入れ違いで医師がやってくる。

ルチアの具合を診た医師は痛み止めを飲ますようにと、アローラに指示して出て行った。
 
痛み止めを飲んだルチアはそれからまもなく眠りに落ちた。


 
翌日、エラの両親が城に呼ばれた。エラを本当に浜辺で助けたのか聞くためだ。
 
謁見の間の玉座にユリウスはきちんと正装をしており、それがエラの両親に威圧感を与えている。

ジラルドは座るユリウスの隣に立っている。
 
玉座から少し離れ、真紅の絨毯の上に膝をついたエラの両親はジョシュから話を聞いているのか、どこか落ち着かないように見える。

「エレオノーラ……エラを助けた時のことを話せ」
 
ユリウスは威厳のある声でふたりに言う。

「はい……姫さまは浜辺で倒れており、まるで人形のようなお姿に驚いたのを覚えています」

「身につけていたのは?」

「たしかピンク色のフリルがたくさんついたドレスだったかと……」
 
父親は記憶をたどるようにゆっくりと言葉にする。

「そのドレスは? 他に身につけていたものは?」
 
ユリウスは嘘か本当かを見極めようと、鋭くふたりを見ている。

「島には必要ないので少し経ってから焼いてしまいました。身につけていたのはそれだけでございます」

「姫を助けたとき、他に誰かいたか?」
 
ユリウスはどうにかしてエラの両親の言葉から落ち度を引き出したかった。


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