国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
ルチアの部屋にエラが見舞いに来ていた。

エラのサファイアブルーの瞳に合わせたブルーのドレスを着て上品にベッド横の椅子に座っている。
 
エラは城へ来てから毎日、行儀作法や勉強のためにそれぞれに教師がつけられていた。
 
街に憧れていたエラは貪欲にそれらを習得していっている。

背にたくさんのクッションが置かれ、頭に包帯がされているが、淡いブロンドは片側ひとつに三つ編みにしているルチアは美しく、エラは嫉妬してしまう心を抑える。

「元気になってよかったわ」

「エラ、おばあちゃんは歩けるようになった?」

「ええ。食事も普通になったし、だいぶ元気になったわ」
 
ルチアはホッと安堵した。高齢であるから、回復が気になっていたのだ。

「わたしに会いたいって言わない……?」

「うん。一言も言わないの。なんだか変よね」
 
エラは小首を傾げる。
 
これからの祖母が気になり、ユリウスが来たときに聞いてみようと思っているが、この二日間部屋に現れない。

「ユリウスさまは忙しい?」

「ルチア、あたりまえじゃないの! この国の国王さまよ? 毎日地方の官僚は上奏に来るし、いろいろ忙しいの」
 
エラも城へ来た当初ユリウスになかなか会えずに、ジラルドに聞いたことがあった。

「……そうだよね」
 
ルチアは祖母が心配で、ユリウスがいかに多忙なのかを考えておらず自己嫌悪に陥る。

「怪我が治ったら、ルチアは島に戻るんでしょ? 海で泳げない生活なんて考えられないものだものね」

「……島の家も直さなくちゃね」
 
自分が姫だと信じられないし、証拠があるわけではないのだから、島に帰るのが一番だろう。

「ジョシュが木材を買っては島に戻ってるの。彼は島の普及に費やしているわ。他のみんなもだけど」
 
ジョシュが働いているところが目に浮かぶ。

最後、ひどいことをされたけれど彼の性格は買っているルチアだ。それは一緒に育ったから変わらない。


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