国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
大広間に国王と淡いブロンドの娘が現れると、みるみるうちに道が開けルチアはダンスフロア中央へといざなわれる。

招待客の興味津々の視線にルチアの心臓は痛いくらい暴れている。

(わたしがミスをしたら、ユリウスさまが笑われる……)
 
そう思うと金縛りにあったかのように、足が動かない。
 
引きつったような表情のルチアの耳にユリウスは顔を寄せる。その瞬間、周りで見ていた女性たちから黄色い悲鳴があげられる。

「ルチア? いつもの君でいいんだ。周りは気にしないでいい。君が間違えたとしてもわたしがわからないようにフォローしてあげるから」
 
心に響く声で甘く諭すように囁かれ、ようやくルチアの身体から力が抜けた。
 
ユリウスが楽団に手をあげると美しい音色が奏ではじめられた。
 
ルチアはユリウスのリードで踊り始めた。習った先生とは違い、ユリウスはルチアを軽々と躍らせてくれる。
 
ダンスとはこんなに楽しいものだったのかと、ルチアはずっと笑顔が崩れない。

「ユリウスさま、楽しいです」
 
クルッとルチアはユリウスの腕の中で回される。

「泳いでいる時のように生き生きしている」
 
周りで見ている者たちは、楽しそうな国王に目を見張っていた。
 
そこで曲調のテンポが少し早くなる。

「わたし……この曲……知っている気が……」
 
クルクルとユリウスに回されるも、身体が動きを覚えている気がする。
 
ルチアは水を得た魚のように、自由に踊ることが出来た。
 
ふいにユリウスが動きを止めた。

どうして泊まったのかと、ポカンとなるルチアを見つめる。

「どうし――」
 
小首を傾げて見つめるルチアをユリウスは信じられないような顔で彼女を抱きしめた。
 
またも周りから小さな悲鳴が上がる。

「ユ、ユリウスさまっ、離して……」

「君はやっぱりエレオノーラだ」

「えっ!?」

「この曲でよくわたしたちは大人のまねをして庭で踊っていたんだ。君の身体が覚えていた」
 
ユリウスはルチアの両手を握り、確信を得たかのようにエメラルドグリーンの瞳を輝かせた。


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