国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
そこへジラルドがふたりの元へやって来る。

「ユリウスさま、ここではルチアさんが注目を浴びてしまっています」

「ああ、そうだな。ルチア、喉も乾いただろう。休もう」
 
ユリウスはルチアをエスコートして玉座へ連れて行く。
 
そのふたりの姿を悔しそうにした唇を噛んで、じっと見つめているエラだ。そんな彼女の元にひとりの男が近づいた。




 翌朝、重たいカーテンが開けられ、朝日がルチアの顔にあたり彼女は目を覚ました。

「おはようございます」

「アローラさん、おはようございます。すみません。わたし寝坊をしてしまったみたい」
 
ルチアはベッドから抜け出て、床に足をつける。

「夜会でお疲れになったのでしょう。ぐっすり眠れましたか?」

「はい。枕に頭をつけたらすぐに」
 
緊張とダンスで思ったより疲れていたようだった。

「陛下がご昼食をご一緒にと。お支度にも時間がかかりますから、お早めに起こさせていただきました」

「大変! あまり時間がないわ!」

「お風呂の用意は出来ておりますから」
 
ルチアは風呂の用意がされている隣の部屋へ向かった。

「アローラ、どこへ行くの? ユリウスさまの執務室じゃないの?」
 
階段を下りて一階の廊下を歩いている。

「はい。今日は特別に陛下がお考えになった場所ですよ」
 
不思議そうに歩くルチアにアローラはにっこり笑って先を急がせる。城の前庭に出ると、二頭立ての馬車が待っていた。

「馬車に乗るの?」
 
馬を見ないようにしていると、カツンカツンと足音が聞こえてきた。

「ルチア」

ジラルドを従えたユリウスだった。

「ユリウスさま、いったいどこへ行くのですか?」

「それは内緒だよ」
 
ユリウスは悪戯っ子のような笑みを浮かべ、ルチアを馬車の中へ進ませ自分も乗り込んだ。
 
扉が静かに閉められると馬車は動き出す。


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