国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「未来の王妃のために」

「ユリウスさま……」

「朝食を食べていないんだろう? さあ座って」
 
ユリウスに椅子を引かれ、ルチアは腰を下ろす。座った場所から海が見える。
 
海が近く、外で食べる贅沢な時間だ。

テントは海を正面に天蓋が開けられているので、周りからは見えない。

ここはそれほど人はやってこないが、今は城からの大事の設置に何事かと、街の人々が興味津々で遠巻きに見ている。
 
アローラが給仕し、外の警備をジラルドは指揮をとっている。

慣れ親しんだ海の匂いにルチアはくつろいだ様子だ。その姿にユリウスは満足し、微笑む。

「食べ終わったら、驚かせることがある」
 
ユリウスは椅子の背に身体を預け、果実酒を飲んでいる。

「驚かせること……?」
 
ルチアはキョトンとなって、口元に笑みを浮かべるユリウスを見る。

「今知りたいです」

「ルチア、君はせっかちな子だったのかい?」

「だって、そう言われたら気になって仕方なくなります」
 
ユリウスは顔を顰めるルチアに声を出して笑う。

「すまない。食事を終えるのが待ちきれなくて言ってしまったよ。まずは食べて」

柔らかいパンを手にしたユリウスは、ルチアに手渡した。
 
それからのルチアはユリウスの言葉が気になって、急いで食事をし、喉につっかえそうになり笑われる。

「落ち着いて。そんな君も可愛いけどね」

「ゴホッ、ゴホ、ユリウスさまのせいですからね」
 
そう言って恨めしそうにユリウスを見てから、ルチアは大好きなミルクを飲んだ。



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