国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「君にはユーリと呼んでもらいたい。幼い頃、君はユリウスが言いづらくて、可愛らしい声でユーリと呼んでくれていたんだ」

「ユーリ……」
 
ルチアから吐息のような声が漏れると、ユリウスは再び唇を重ねて塞いだ。
 
震える上唇や下唇が啄まれ、ユリウスは舌をルチアの口腔内へ忍ばせる。ルチアの口腔内を探究するユリウスの舌。
 
ルチアの身体に力が入らなくなり、ユリウスにしがみつく。ルチアはたくましい腕に抱き上げられた。
 
彼女のベッドの二倍はありそうな、大きな天蓋付きのシーツの上に見つめ合いながらルチアは静かに降ろされる。

男らしく長い指がルチアの胸のリボンを外していく。

「ユリウスさま、わたし――」
 
ユリウスにもっと薄着のところを見られていたが、瞳を見ながらゆっくり脱がされると、恥ずかしくて両手で顔を隠したくなる。

「ルチア、ユーリだ」
 
宝石のようなエメラルドグリーンの瞳にルチアが映っている。
 
ユリウスはルチアしか見ていない。今後も、死がふたりを別つ時まで愛しい彼女しか見ない。そうルチアに語りかけているようだった。

「愛している」
 
ユリウスははっきり愛の言葉を告げると、ルチアの喉元に唇を落とした。



 
ユリウスの隣でルチアは静かな寝息をたてて眠っていた。眠る頭をほんの少し持ち上げ、長い髪を自分とは反対側にひとつにしてから、腕を差し入れる。
 
その無防備な姿を見ていると、再び愛したいという欲望が湧き上がる。
 
ユリウスは掛け布団から出ている華奢な肩にキスを落とす。そのとき、腕の内側にピンク色のほくろのようなものを見つける。

「これは……」
 
それを見た瞬間、八歳の頃の記憶がうっすらユリウスの脳裏に蘇りはじめる。


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