国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
翌日もみんなは疲れた身体に鞭を打って潜った。

疲れすぎて、いつ溺れるかもしれないところまできていた。

ルチアが海面に浮上したとき、船の上でルチアの父親くらいの年齢の男がバレージに殴られるところを目にした。

ルチアは船に上がり、殴られている男のもとへいき、バレージとの間に立ちふさがる。

「どうして乱暴をするのですか!?」

「この男は深く潜ったふりをして、我々をだましたのだ」

「体調によっては、深く潜れないときだってあります!」

殴られて唇の端から血を流している男をかばう。

「女だから殴られないとでも思っているのか?」

今のバレージは騙されたと思い込み、怒りに燃えている。

「そういうわけではありません。わたしたちは奴隷ではありません。もう少し人として考えてほしいのです」

「この小娘が!」

ルチアはバレージに頬を叩かれた。頬全体にピリッとした痛みが走る。

「ひどい目にあわされたくなければ、黙っていろ! 早く潜れ!」

叩かれていた男はルチアを心配しながらも、海の中へ飛び込んだ。

ルチアも黙って海へ身を投じた。



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