国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「おばあちゃん、息が続かないときもあるって、アントニオさんをかばっただけ」

「ルチア、まったく……正義感が強すぎるせいで、首を突っ込みすぎやしないか心配でならないよ」
 
祖母の口から深いため息が漏れる。

余計なことを話してと、ルチアはジョシュを睨むと、彼は悪かったというような顔になった。

「おばあちゃん、お腹空いたわ」

「ああ、もう用意はできているよ」
 
焼き魚の質素な夕食だが、重労働をしてきたふたりにはそれがちょうどよかった。
 
夕食を食べ終えると、ルチアは外へ出た。

ジョシュもついて来ようとしたが、女二人だけの話だと言って留まらせた。

満月の月明かりが照らす海がとても綺麗で、ずっと見ていたくなる。
 
いつもふたりが会う島の端の方で、先に到着していたルチアは足を海面に浸して待っていた。
 
数分後、エラがやってきた。

「ルチア」
 
浮かない顔をしているエラはルチアの横に座る。

「どうしたの? エラ」

「お願い。ジョシュを取らないで」
 
小屋まで帰ってくるルチアとジョシュを目にしたエラはまるで夫婦のような彼らに嫉妬した。

「もちろんよ。ジョシュを取るとかの問題じゃなくて、わたしは彼を友達として好きなだけ。だから安心して」

「ご、ごめんなさい。ルチア……あなたの気持ちはわかっているけれど、ジョシュは……」
 
エラはシュンとなってうつむく。

「今、ジョシュは恋愛よりも、潜るのがきつくて大変なの。もう少し待ってあげて」

「うん。わたしが悪かったわ。不安になって……わたしも深く潜ることが出来たら手伝えるのに……」
 
ルチアはエラの膝の上に置いた手に手を重ねる。


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