国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「いっ……た……」

ふくらはぎの痛みに身体が縮こまる。板に手をかけていたルチアはそのまま海の中へ落ちた。

「君っ!?」
 
ルチアに助けられた青年は海に沈んでいく娘に驚き、海へ飛び込んだ。
 
疲労の限界にきていたルチアの身体はまるで鉛がついたように重く、どんどん沈む。

(苦しい……)
 
そのとき、腰が強い腕に抱かれた。

(誰……? ジョシュ……? 違う……さっきの……)
 
自分の身体に腕を回しているのは、さっき助けた青年だと思ったところで、ルチアは意識を手放した。


 
桟橋にルチアの身体を横たえ、ユリウスは青紫になっている唇に唇を重ねると、息を吹き込む。

「大丈夫か!?」
 
ルチアは胸が何度も圧迫され、唇から何かが吹き込まれるのを感じて、意識を取り戻した。

「ゴホッ、ゴホッ……」
 
ルチアの口から海水が出てくる。

「わたし……」
 
朦朧としながら、うっすら目を開けると美しい青年を目にしたルチアだが、ふたたび意識が遠のいた。

「君っ!」
 
ユリウスはふたたび意識を失ったルチアの身体を抱き上げると、帆船に向かった。


< 34 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop