国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「孫は大丈夫ですか!?」

 
祖母はユリウスの腕に抱かれているルチアを不安そうに見る。
 
ユリウスは祖母の言葉に返事をせず、ルチアを抱きかかえたまま小屋を出る。

この心配そうな祖母が今まで放っておいたとは思わないが、ユリウスは怒りがこみ上げていた。
 
足早に帆船へ戻ると、ジラルドが出迎える。

「やはり病気でしたか」
 
ユリウスに抱きかかえられているルチアを見て、ジラルドは顔を顰める。

「ひどい熱だ。こちらの呼びかけに答えない。医師は?」

「用意した部屋で待機しています」
 
ジラルドに軽く頷いたユリウスはその部屋に向かった。ここで空いているのはユリウスの寝室の隣しかなかった。
 
その部屋に入ると、医師が近づいて来る。

「先日の娘だ。なんとか熱を下げてくれ」

「わかりました」
 
ユリウスはルチアをベッドに横たえると、一歩後ろに下がり、医師が彼女を診るのを見守った。
 
少しして医師が身体を起こし立ち上がる。

「どうなんだ?」

「おそらくこの薬で熱が下がると思います」
 
医師はカバンの中から紙に包まれた薬を出す。

それは一包づつのもので中に粉薬が入っている。ユリウスも滅多に熱を出すことはないが、飲んだことのある薬だ。

「しかし、ここにあるのは三日分なので、これが効かないとなると街へ戻らなければなりません」

「わかった。とりあえず飲ませて様子を見よう」
 
ユリウスはベッドの端に腰を下ろすと、一包を開けて流し込みやすいように三角に折る。

アローラがコップに水を用意し待っている。

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