国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「まだ動けないだろう? 強情を張るのはやめるんだ」

 
枕に頭をつけると、目を閉じてルチアはめまいと必死に戦う。

「食事をしてから、薬をもう一度飲むんだ」
 
ルチアは目を開けて真剣なまなざしで見つめるユリウスを見た。

「すみません……」

「君の恋人も心配している」

「え……恋人……?」
 
ルチアはキョトンとした表情になった。

「さきほど心配してやって来た青年だ」

「もしかして……ジョシュ……?」
 
島に若者は七人しかいないが、心配してやって来る青年はジョシュしか思い当たらない。

「ジョシュは恋人ではないです。彼の両親が亡くなって、一緒に暮らしているだけです」
 
違うと聞いて、ユリウスはうれしさを否めない。
 
そこへアローラが扉を叩いた後、食事を持って入室してきた。
 
ユリウスはルチアが起き上がるのを手伝う。

「体力がひどく落ちているから、ちゃんと食べるように」
 
ユリウスはルチアが食べ始めるのを見届けると、アローラに任せて部屋を出た。
 
ルチアはパンをミルクに浸した温かい食事を食べ始めたが、二口食べるのが精いっぱいでアローラをがっかりさせた。

「ごめんなさい……せっかくの食事を……」

「いいんですよ。まだ熱が高いので食欲がないのでしょう。お薬を飲んで休んでください」
 
アローラは優しく微笑み、食事を片付けると、薬を渡す。

「これを飲むんですか……?」
 
白い紙に包まれ、開けてみると真っ白な粉。初めて見る薬にルチアは戸惑う。

「はい。熱さましでございますよ。先ほどもアドリアーノさまに飲ませていただいたのですよ」
 
どうやって飲ましたのかは話さず、ルチアが薬を口に含むのを見ている。
 
とても苦い薬で、ルチアは口に入れた途端吐き出したくなったが、アローラから水を受け取って急いで流し込んだ。


< 51 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop