国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
アローラは部屋に入って来たエラを見て目を見張った。

彼女はエレオノーラが生まれたときも城におり、ユリウスが幼い彼女と遊ぶときは付き添っていた。その頃、二十五歳だったアローラはユリウスやジラルドよりエレオノーラをよく記憶していた。
 
見れば見るほど記憶にある幼い姫に似ている気がした。
 
ジラルドはアローラの様子を見て、彼女もそう考えているのだと感じた。
 
エラはベッドの横の床に膝をつけて、眠るルチアを見ている。

「ルチア、早く元気になってね」
 
眠りを邪魔しないようエラは小声で言うと立ち上がった。

「あと数日は無理できないかと思います」
 
アローラはエラの顔を細部まで見つめながら言った。

「エラ、せっかくですからお茶でもいかがですか?」

「えっ……でも……」
 
貴族のお茶の作法など全く知らないエラは戸惑うが、飲んでみたいとも思う。

「いいではないですか。上へ行きましょう」
 
お茶を飲ませている間に、ユリウスにエラを紹介したいとジラルドが考えていた。
 
ジラルドは甲板横のリビングへエラを案内すると、そこで彼女を待たせてユリウスの政務室へ向かった。

 

貴族の上奏の書類を読んでいたユリウスは扉が叩かれ、視線を上げた。

「ユリウスさま、驚くことにエレオノーラ姫にそっくりな娘がルチアの服を届けにやってきました」

ジラルドの言葉にユリウスは怪訝そうに眉を寄せて見る。

「エレオノーラに? そんなバカなことがあってたまるか」

「名前もエラと言います。アローラも驚いておりました」
 
アローラも……と、言われてユリウスは書類を机に置き椅子から立ち上がった。
 
焼き菓子と紅茶を前にしてエラは微動だせずソファに座っていた。マナーをまったく知らないエラは困っていた。

そこへ先ほどの黒髪の男性がやって来た。そして後ろには光り輝かんばかりの美しい青年がいる。

エラはさっと視線を自分の膝に落とした。



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