国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
素早くロープを縛り終えたジョシュは先を歩くルチアの手を掴むと、家とは別の方向へ歩き出す。

「ジョシュ……?」

黙ったままのジョシュはルチアを引っ張るようにして歩く。

「どうしたの? ジョシュ、痛いよ。放して」
 
向かっている先は小屋がひとつもない草むらだ。一言も話さず強引に連れて行くジョシュにルチアは怖くなった。

「帰りたいの! 放して!」
 
強く言うと、ジョシュの足が止まった。そして振り返ると、強く抱きしめられる。

「っ! いやっ! 放して!」
 
ジョシュの腕の中で暴れるルチアだが、海で鍛えている彼の腕は解けない。
 
どうにかしてジョシュから離れようとしているルチアは唇が乱暴にふさがれた。ユリウスとは違う粗野なキスだ。

「ん――っ」
 
ジョシュの舌を受けれないようにギュッと閉じるが、いとも簡単に舌でこじ開けられる。ジョシュの生ぬるい舌がルチアの口腔内に侵入した。
 
ルチアはジョシュの胸を自分の手が痛くなるくらい叩くが、キスが止めることはない。

そうしているうちに押し倒され、荒々しいキスはさらに深いものになっていく。
 
スカートの裾から手が入り込み、内側の腿を撫でられる。ルチアは力を振り絞って、ジョシュの顔を引き離す。

「嫌だ! 止めてよ! こんなのジョシュらしくないっ!」

「俺らしいってなんだよ! ずっとお前を待っていたんだ! 俺がお前を抱いて国王のことなんか忘れさせてやる!」
 
ジョシュは乱暴に言い切ると、唇を塞き、形が変わるほど胸を揉む。
 
ルチアはどうにか逃れようと、足をバタつかせ、ジョシュの力が緩んだすきに起き上がった。

「もう二度とこんなことしないで! わたしに触れたら絶対にジョシュを許さないから!」
 
ルチアは駆けだすと、海に向かって飛び込んだ。


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