国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
しばらくして小屋に戻ると、ジョシュはおらず祖母だけだった。

「どうしたんだい? 明日帰るんじゃなかったのか?」

「ジョシュは?」

「帰ってきてからすぐ、マリオのところへ行ったよ。酒を飲むらしい。一日も海に入らないことがないのかい? 早く身体を洗ってきな」
 
びしょ濡れのルチアに祖母は普段と変わらなく言う。
 
ジョシュが三歳年上の仲がよいマリオのところに行ったと知って、ホッと安堵したルチアは塩水を洗い流しに着替えを持って小屋の外へ出た。
 
さっぱりして小屋に戻ると、祖母はもう床に横になっていた。

ルチアは祖母の隣に横になると目を閉じる。

いつもは少し離れた場所に寝るのだが、今日は祖母の隣で安心して眠りたかったのだ。
 
ジョシュが帰ってきたらと思うと怖かった。
 
暗がりで目を閉じると、ユリウスとエラのことが思い出される。

(ユリウスがまさか国王さまだったなんて……一緒になれないと言うはずだ。身分違いにもほどがある)
 
ユリウスのことを思うと胸がシクシク痛み、これはいつ無くなるのだろうか。しばらくは無理そうだ。
 
大好きなエラが幸せになるのは嬉しいことだ。ユリウスならエラを幸せにしてくれるだろう。
 
ユリウスを忘れよう。そう誓ったルチアだった。


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