国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
ユリウスはルチアの祖母の部屋を訪れていた。

「まさか国王さまだと思いませんでした……」

祖母は島でそっけない態度をとったユリウスが国王だと知り、ベッドに座ったまま深く頭を下げた。

「ルチアの怪我はひどいのですか?」
 
ユリウスはルチアの怪我の具合を教え、まだ歩くことが出来ないと伝えると、祖母は肩を震わせてさめざめと泣き始めた。

「1ヵ月もあれば治るようだ。心配はいらない。お前に聞きたいことがある。ルチアはなぜあのペンダントをしていた?」

泣いていた祖母は涙を拭きながら顔を上げる。

「ルチアが本当の姫なのです。浜辺でルチアを見つけたとき、あのペンダントを身につけていたんです」

「エラが浜辺に倒れていたのではないのか?」

「あの子ではありません。わたしはルチアと離れたくないためにエラの両親に嘘を吐かせたのです。助けたときのルチアは髪が顎までの長さで、あのペンダントを首からかけていました」
 
ユリウスは祖母の身勝手な思いに怒りを覚える。
 
祖母の話はあの頃のエレオノーラの髪型と一致する。

ただエラが拾われたとき、祖母もいたかもしれないのだ。今さらルチアが姫だと言っても、大臣たちは納得しないはず。

「お前が事を複雑にしたのだ。あのとき、ルチアが姫だと言えさえすれば、すぐに認定されただろう」

「ルチアは本物の姫です! どうして疑われるのですかっ!?」
 
祖母はサファイアのペンダントを持っているルチアは姫だと決定したはずだと思っていた。

「お前がペンダントを盗んだかもしれないだろう?」

「いいえ! わたしはそんなことをしていません!」
 
祖母はつい声を荒げる。

「エラの両親にも話を聞かなくてはならない」

「はい。ぜひとも聞いてください。わたしが頼んだのですから」
 
祖母は自信を持ってユリウスに頷いた。


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