ケオ&エレ
────レルムが悪魔の王と契りを交わす前のケオの1族────
城の庭園で2人の人影がある。1人は焦っている様な。もう1人は優雅。白い薔薇が美しいなか、2人の会話が聞こえてくる。
「姫様!!」
「あら…どうしたの?ナミラ?」
「エレが手出しをする前に天使との契りをっ!」
「ナミラ…焦っていてはだめよ?焦ると上手くいくものも上手くいかなくなりますわ…。こういう時こそ落ち着くのですわ」
「姫様〜…こんな時に落ち着いている方がおかしいですよ!」
「焦るより落ち着くっ!ですわ」
「…はぁ」
私は姫様のメイド──おつき役。ナミラ・ハイルス。姫様には恥ずかしながら、いつも良いようされています。
私が姫様と呼ぶお方はリルム・カトラ・ケオ。ケオの1族の姫君様。
今、私達はエレとの戦乱を終わらせる為、天使の王と契約を結ぼうとしているのですが…この通りなかなか姫様は契約を結ぼうとしないのです。「焦るな」の一点張りで…。
「ナミラ様…。っ!姫様もおられましたか…」
「どうかしましたか?チャト…」
「はい。ナミラ様に騎士長様からのお伝言です。『動く前に動く。今しかない…』との事。姫様にも伝えてとの事だったのですが…私には全く分かりませんでした」
「大丈夫ですチャト。私は分かりました。姫様聞いていましたか?」
「ま…まぁ」
「チャトありがとう。下がっていいわ」
「分かりました。それでは」
「チャトって確か…」
「はい。私の部下であり、騎士団との繋ぎ役です」
「今しかないってどういう事…?」
「動く前に動くという事は相手────エレが動く前にケオが動くという事。これは分かりますね?」
「うん」
「今しかないというのはきっと…切り札を先に用意し、戦乱を終わらせるという事でしょう。先手必勝…という所でしょうか」
「先手必勝…ね〜。騎士長のルディンから言われたら仕方ないわね…。やって見るだけやってみる…」
「では…着替えて行きましょうか」

「やっとその気になったか。リムル殿」
「…先手必勝ってルディンが言うからよ」
「ナミラを困らせるな。一応付き人であるが、ナミラは私の部下だ。もちろんチャトもな」
「…むぅ」
「時は一刻を争う。始めるぞ…リルム」
「わかった」
「それでは部下達よ天使の王と繋げ!」
「はっ!」
「我々には天使が見ていて下さっている!必ず、姫の元に繋がる!」
【(私を呼ぶのは…貴方?)】
────リムルの脳内────
「あなたは…?」
【私?私は天使達の姫『スイラーシャ』。『スーシャ』って呼んで下さい】
「私は、リルム・カトラ・ケオ。光のエルフの1族の姫…」
【貴方も姫なのですね。リルムさん】
「…うん」
【私、とっても嬉しいです。エルフとも人ともあった事がありませんでしたから】
「そう…なの」
【…?その暗い顔…何かあったのですか?】
「うん。…エレとの戦いで沢山のエルフ達が犠牲になってきたの」
【エレとは…?】
「悪魔との契りを交わす…最悪の1族。私達と同じエルフの1族」
【悪魔っ…。…私達天使と悪魔は最大の敵】
「そんな事があってお願いしたいの。私と契りを交わして一緒に戦ってほしい」
【…!】
「お願いっ…このままじゃ…皆死んじゃう…。助けて…助けて…」
【泣かないで…リルム。分かったよ。いつかは滅ばさなければいけない相手です。悪魔は。リルム…貴方と一緒に戦いましょう…だから…泣かないで?…ね?】
「うん…ありがとう……スーシャ」
【いいえ。この身が滅びるまで…貴方にお付き合いしますわ】
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