神にそむいても


この時代はどうやら一日二食。
お昼近くに食事をすませた。


「姫!」

昼食後、姫と一緒に縁側に出て庭を眺めながら、
昨日と同様、姫から色々と質問を受けていると、

姫を呼ぶ声とともに廊下をドカドカと歩く男らしい足音が近づいてきて、
あの男が現れた。

この人、苦手だなぁ……。

今日は昨夜見たような聖徳太子のような格好から少しだけラフな衣装に身を包んでいる。


「お兄さま?今日は一日公務でお忙しいのでは?」

「ああ、そうだったんだが、伯父上の体調がすぐれず。
 今日は思いがけず時間が取れたのだ」

「まぁ、そうでしたのね」

姫はその時間の合間に自分に会いに来て嬉しいみたい。
すごくニコニコしてる。


「だから、今日は狩りに行くぞ!」

「まぁ、それはいいですわね。今日もお兄さまの勇姿が見られるのね」

「あぁ、任せておけ」

ニヤリ。
自信ありげに笑う。

なに、あのカオ!
絶対ナルシストだろ!!

……やっぱり、姫の趣味は私とは違うんだな。


「美姫」

ニヤッと笑ったまま、私を見る。

「はい」

「俺の素晴らしい姿を見て見惚れては駄目だぞ、
 姫にこってりとしぼられるだろうからな」

そう言って高笑いする皇子。

「ま!お兄さまったら~」

それに対してうっとりとした瞳のまま、
そして少しだけヤキモチの混じった口調で答える姫。

私は曖昧に笑うしかなかった。

てか。
見惚れるか!

チラリ。
うたさんや秋保さんを見ると、こんなふたりのやりとりはすっかり見慣れた光景らしく、
顔色ひとつ変えずにいた。

こんなやりとりを、ここに住ませてもらってる限りはずっと見なきゃいけないのか。
つらーい!

でも、ちょっとだけ羨ましい。

人前で人の目も気にせず、こんな恥ずかしい会話をできるふたりが。

ちょっとだけ?
ううん、すごく羨ましい。


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