神にそむいても
「よし、このあたりで今日は狩るとしよう」
秋保さんが言ってくれたようにそれからすぐに山道に入って、
皇子の声でみんな足を止めた。
着いたの?
っていうか!
女子もハンティングするの!?
「さ、美姫。こちらに行きましょう」
どうやら男女別行動になるらしい。
よかった。
男性陣は皇子を先頭にさらに奥へ進んでいく。
一方、姫を筆頭に女性陣はそれにはついていかず、その場で散らばる。
私は姫に導かれて、秋保さんとともに近くに咲いてる紫色の花のほうへ。
姫も秋保さんも草花を見分けながら、手早くちぎっていく。
「ねぇ、美姫の国でもこのようなことはするの?」
このようなこと?
花摘みのこと?
でも、姫も秋保さんも花だけじゃなく、草も摘んでるし。
これはなにをしてるんだろう……。
私はあまり自然に触れたこともない。
山なんてほとんど行ったことないし。
せいぜい、小学校の時の林間学校の時ぐらい。
だから、花の名前もよく知らない。
「私にはそのあたりの記憶はありませんけど。
多分、私の国でもする人はいると思います」
「そうなのね」
「ねぇ、今姫たちが摘んでるのってなにかに使うの?」
「美姫は本当に覚えていないのかしら?
それとも、あなたがしていなかったのかしら?」
姫は私の質問に驚いて一瞬きょとんとしたものの、
やがて手に持っていた汚い色の草を私のほうへ向ける。
「うはっ!」
ヘンな声を上げてその匂いのきつさに顔をそむけた。
「なにこれ~」
私は両手で鼻と口をふさぐ。
自分でも険しいカオをしてるのがわかる。
「これは煎じて飲むと、体調のすぐれない時などに効くのよ」
姫は本当におかしそうにクスクスと笑った後、説明してくれた。
「へぇ」
そして、今度は近くに咲いてあった花をちぎると、
「これは蜜を傷口に塗ると、早く治るのよ」
と教えてくれる。
「へぇ~」
昔の人はすごいな。
こういう生活の知恵がハンパない。