神にそむいても
宴会場。
みんな盛り上がってる。
こんなに人がいるのに、私は独りぼっちなんだ。
「どうされましたか?」
秋保さんが心配そうに声をかけてくれる。
「ううん、なんでもないっ」
私はいつのまにか涙を流していてそれを慌てて拭った。
「……国のことで何か思い出されたのではありませんか?」
そう言われた瞬間、拭ったはずの涙が一瞬にして溢れる。
「そうかも……」
照れくさくて秋保さんから視線をそらした。
「帰りたいですか?」
「……そうだね、そうかもね。
でも帰り方もわからないし」
「そうですよね……」
秋保さんの返事がやけに実感がこもっていて、
彼女を見るとどこか遠くを見ていた。
秋保さんの素性は、私は知らない。
だけど、なんとなく彼女には私と同じように帰れない事情があるのかもしれないと思った。
あ……。
秋保さんと初めて会った時から、
誰かに似てるって思ってたけど、それが誰かわかった。
しほりだった。
なんとなく雰囲気がしほりに似てる。
そんなことに気づいた今夜は少しだけさみしくないかも。
「ありがとう」
「いいえ」
秋保さんはなんで私はお礼を言ったのかは尋ねることなく、
代わりに優しい笑みを浮かべていた。
祭りのあと 終