神にそむいても


はぁ……。
今日もここで過ごすのか。

最近すっかり見慣れた景色が
今朝も起き抜けの私の瞳に飛び込んでくる。


毎夜
「目覚めたら、この夢から醒めてますように」
という願いごとをしながら眠りにつくけれど、
朝になって毎日がっかりする。

そんなことを繰り返すようになってから一週間が経過した。


「美姫さま、姫さまがお呼びでございます」

秋保さんに服を着替えさせてもらったのを見計らったかのようにうたさんが呼びにくる。
これもいつもと同じ。

今日もおんなじような時間がやってくるんだ。

ここ数日はあきらめにも似た気持ちで過ごしてる。


智、今どうしてるんだろう。

智とこんなにも長い時間離れたのは初めて。
ひどく心細い。

その一方で少しずつ確実にこの時代に溶け込んでいく自分がいて、
段々と今まで過ごしていた時代が夢で、
この時代に生きてるのが本当なのかもしれないとすら思うこともある。

智なんて男の人も、本当はいなかったのかもしれない、
そんな思いまで浮かぶほど。


智。こんなに弱ってるんだよ、私。
どうしてどこにもいないの?

そんなこと思ってるの?バカだなって
笑ってよ。

ねぇ智、私の考えを否定して。
お願いだから。


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