神にそむいても
「おい、お前。名は何と言う?」
「……葛城、智です」
智が怪訝そうに皇子を見返しながら答えると、
「ほぉ」と目を細め、少し表情が和らぐ。
「葛城か。良い名前だな」
「ありがとうございます」
「では智。美姫とお前はどのような間柄だ?」
皇子は笑ってるけど、目つきは再び鋭くなっている。
ここ最近、皇子と接してわかってきた。
きっと智の答え次第で私たちの命の保証がない気がする。
「……美姫はオレの妻です」
え?
今、私のことを妻って言ったの?
依然、私の行く手を阻んでる男たちの間から智を見ると、
こちらを見ている智が私に向けている視線はまぎれもなくそうだと告げている。
熱を帯びたような、
それは恋しい人に向けられる想いを含んだ瞳だった。
顔が火照る、全身が燃えるように熱い。
「どうやらそのようね」
私を見て智の答えが間違いないと感じたのか、
姫はニコッと笑う。
これはやっぱり夢なんだと思う。
だって、智が私をそういう存在であると認めてくれた。
そう、現実ではありえないことだから。