神にそむいても
「智よ。お前の話を信じることにしよう。
美姫は今、姫のもとに身を寄せているが、
偽っている様子や我々に危害を加える様子も特に見られない。
しかし、いまだ全てを信用している訳ではない。
お前をこの場で葬ってしまうのは容易い。
だが、俺が人を殺めるのは俺にとって害があると判断した時だけだ。
……俺に仕えてみるか?」
皇子の言葉に当然男たちがうろたえてる。
「勿論、嫌とは言わせない。
それを申すならば罪人として突き出すまでだ」
智は皇子を見たあと私を一瞥して大きくうなずくと、
「よろしくお願いします」
と皇子に頭を下げた。深く深く。
智の言葉をきいた瞬間、こらえていたものがあふれる。
私は顔を両手で覆った。
拭っても拭っても止まらない。
智がにじんで見える。
皇子は満足そうにうなずいた。
「よし、縄を解いてやれ」
「しかしっ、皇子」
通せんぼしていたうちの真ん中の男の人がオロオロしながら口答え。
「俺の言うことがきけぬと言うか?」
ギロリ。
皇子の尖った視線に発言した男がすっかりうろたえる。
「はっ!」
その人が慌てて返事をして智のところに駆け寄っていくと、他の人も続く。