神にそむいても


秋保さんは気を遣ってくれたのか、いつのまにか姿を消していた。
部屋にふたりきり、向かい合って腰を下ろす。

「ねぇ、ホントに智?」

「美姫こそ。マジで美姫?」

「ぷっ」
「プッ」

じっと見つめ合って、
どちらからともなく吹き出してしまった。
そして、ケラケラゲラゲラと笑い合う。

こんな風に智と過ごすのはもう何年ぶりだろう。

あぁ、そっか。
あのキス以来かもしれないな。


「美姫はここで暮らし始めて長い?」

「うんとね、一週間くらいなるかな。智は?」

「いや、今日気づいたらあそこで皇子たちに囲まれてて」

「そっか、じゃあなにもわかんないね」

「あぁ」

 私は今までのことを説明した。


「……そっか」

話を聴き終えて智は何度もうなずく。

「うん、もうかなりこの世界のこともわかってきたよ」

「じゃあ、この世界じゃセンパイだな」

「うん、美姫センパイって呼んで」

智は「フッ」って小さく笑った。

智のこの笑い方好きなんだよな。
すごく安心する。


智は私をじっと見つめ、そのまま抱きしめてくれた。


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