神にそむいても


「ねぇ智」

「ん?」

「なんで私のことあんな風に言ったの?」

「あ?あぁ……。オレの願望だから」

「え?」

私は思わず顔を上げると、
少しだけテレくさそうに視線をそらす。

「もう、こんなイミわかんねぇ場所に目が覚めたらいて。
 で、あんな風に縛られただろ。
 そしたら、美姫が現れてさ。

 これ、ぜってぇ夢だしって思って。
 だから、夢だったらなに言ってもいいや、オレの思い通りになれって思ってさ」

「……そっか」

私は自分がニヤついてるのがわかって、恥ずかしくて智の胸に顔をうずめる。

あー、智の匂い。
好きだな、安心する。


涙が智の服をじんわり濡らしていく。
この世界にやってきて涙もろくなった気がする。


「美姫は?」

「ん?」

「あんな風にオレが言ってイヤじゃね?」

 私はすぐに顔を上げる。

「ヤじゃない。むしろ、……嬉しかった」

私の言葉をきき終わると同時に、
智がぎゅ~っと息ができないくらい抱きしめてくれる。

「智、苦しいよぉ」

「おぉ、すまん」

私はクスクスと笑う。

智も嬉しそうに笑ってる。
智がこんな風に笑ってるの見るのってホントに久しぶり。



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