神にそむいても
私が同意したのを最後に、智のカオから笑みが消え、真顔に変わるから、
私も自然と笑うのをやめて智を見る。
「美姫は向こうに戻りたい?」
ドクンと心臓が小さく跳ねる。
「智は?」
「もちろん戻りたくないことはない。
けど、こうやって人の目を気にせずに美姫のこと独り占めできるなら、オレはここで生きていきたい。
……死ぬ時まで」
”死ぬ時まで”という最後の言葉に力がこもっていた。
私は小さくうなずく。
よかった、智もおんなじ気持ちでいてくれた。
「一緒だよ。私も智と一緒にこんな風に過ごせるんなら帰れなくていいな」
智が私の応えをきいてそっとキスをくれる。
今夜は満月。
月明かりに照らされて今日は智がよく見える。
この時代にくる前に比べてずいぶんと大人びたように感じる。
きっとこの世界で生きていこうとしてる覚悟が伴ってる。
そして私も、この世界で智とふたり生きていくって決めてる。
私たちの秘めごとをお月さまだけがそっと見つめていた。