神にそむいても
「いやぁ、ご遠慮します。
そんな高貴な方にお会いするなんて。おそれ多いですからっ」
「ふふふ、遠慮しないで。私の伯父さまでもあるから」
「い、いえっ、決して遠慮してるとかそういうことではっ」
姫は男性を見て、
「ねぇ、阿倍(アベ)。
私を連れていかなければ、伯父さまからとがめられるのでしょう?
あなたもご覧のように、幸いここにいる美姫は私と瓜二つ。
お兄さまも初めて美姫を見た時には驚いていた程。
美姫が黙っていれば、伯父さまも騙されるわ」
と矢継ぎ早に話す。
てか、私の意見はスルーかよ!
「し、しかしっ」
阿倍と呼ばれた男性は帝をあざむくような姫の計画に当然戸惑ってる。
うたさんを見ると、なんとも言えない表情。
でも、口をはさむ気はないらしい。
口がまったくうごく様子はない。
「私は絶対に行きませんからっ」
姫のカオがまるで般若のよう。
よっぽどヤなんだろうな……。
確かに、あの夢の気持ち悪いオジサンが孝徳天皇だとしたら、私も会いたくないもん。
「さ、美姫。行ってらっしゃい」
姫の気持ち悪いほどの笑顔に、男はもうなにも言えなかった。