神にそむいても


姫は押し黙っている。

再び私を見る皇極天皇。

「あなたの存在は皇子から聞いています」

「は、はぁ……」

皇極天皇は中へ入ってくると腰を下ろし、
ちょうど私たち三人がトライアングルに座る形になった。


「お母さま、今日はどうなされたの?」

姫もおそらくはこの人にあまりいい印象を抱いていないような気がする。

そんな感情を隠しているようだけれど、なんとなくそれが私には伝わってきた。


「単刀直入に言いましょう。皇子の足手まといになっていませんか?」

表情も声のトーンも冷静。
だからこそ、そこに怒りが込められているように感じた。

だけど、姫も負けてない。

にらむようにして皇極天皇を見返す。
けれど、それが精一杯で黙ったままでいる。

それにしても、足手まといなんて……。

娘に対してよくそんなことが言えるなと思うけど、

歴史を考えてみれば、
親の血なんて都合よく大事にされたりないがしろにされたりしてるから、
そんなことも平然と言えるんだろうな、きっと。

昨日の孝徳天皇の気持ち悪い目つきを思い出される。
ぞっとして急いで打ち消した。


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