神にそむいても


「美姫!美姫はおるか!?」

姫がいつものように一緒にいると、
ドカドカと大きな足音を立てて現れたのは皇子。

「お兄さま……」

皇子を見た途端泣きそうになってる姫を皇子は一瞥してやさしく笑うと小さくうなずいた。


「美姫よ、智はどうした」

「えっ?」

姫も昨日智が来てないことを知ってるから、不思議そうなカオをして皇子を見る。

今度は皇子が怪訝そうに私を見る番。

「夕べはこちらに来たであろう?」

「いえっ」

答えながら慌てて首を横に振った。

「お兄さま、昨夜は智もこちらへは来ておりませんわ」

姫と私は顔を見合わせる。

皇子をチラッと見ると、眉間にシワを寄せてる。

「智の姿が見えぬのだ」

「えっ!」

私は口元を両手で覆う。

どういうことなの?


「昨日、お前のもとへ行くと出たきりだ」

さっと血の気が引いていく。

「来てません!智はこちらには来ておりません!!」

私は何度も頭を激しく振った。

「さようか……」

皇子は私の様子でウソじゃないことはわかってくれたみたいで、
腕組みをして右手をアゴにそえて考え込んだ。

姫が心配そうに私と皇子を見る。


ウソだよ。
智がいなくなるって!

そんなのありえない!


目の前が真っ暗になる。


< 154 / 233 >

この作品をシェア

pagetop