神にそむいても
「美姫、何処へ行く!」
いてもたってもいられず、
玄関へ向かおうとした私の腕をとって皇子は行くのを阻止する。
「だって捜さなきゃ!」
「お前が闇雲に動いたとてどうにもならん事ぐらい分からんのかっ」
「でもっ」
皇子は小さくため息をつく。
「お前は姫と瓜二つ。
独りで動けば姫と間違えた者から拐われるやもしれん」
「……」
そうだった。
皇子のことを快く思ってない人たちがいるから、姫も命の危険にさらされるかもしれない
っていつだったか言ってたっけ。
「美姫ごめんね」
姫の消え入りそうな声。
私は首を横に振った。
「姫はなにも悪くないよ」
「すまんな美姫」
本当に申し訳なさそうにしてる皇子。
この人がこんな態度を私に見せることもあるんだ。
逆に言えば、智が今置かれている状況は思わしくないことだと容易に覚さとられる。
「いえ、皇子が謝ることじゃないですよ」
私はふたりに向けて笑顔を見せた。
強がりかもしれないけれど、強がらなけばやってられない。
「もしかすると、智も俺の事で何かしら危険な目に遭っているやもしれん」
“危険な目”、
改めて告げられるとその言葉にゾッとする。
それでいて、私は智のためになにもできないなんて……。
「すまんな、美姫……。智に関する事を見聞きしたらすぐに知らせよう」