神にそむいても


「先日皇子から言われました、身分を捨てこの国を姫とともに離れると。

 あなたもご存知の通り、姫には皇子との関係を解消するよう言いましたが、
 あのように首を縦に振ろうとはしなかった。
 未だ、その件を呑む便りもない。

 兄上は兄上で、姫を妻に出来ないのなら皇子を追放するとまでおっしゃる。

 姫と皇子を離そうとすればする程に、事は悪化の一途。

 そこでっ」

ぐわっと目を見開く。

そのさまに私は完全に圧倒された。

「姫と瓜二つのあなたが兄上の妻となり、姫には都から離れた場所で暮らさせる。
 そうすれば、万事上手くいくのです」

この人、本気だ。

圧倒されて言葉をはさむことができない。

「皇子と姫が後はどのようにしようとも目をつぶるつもりです。
 離れれば、今程二人の事を見聞きする人間もいなくなるでしょう。
 だから、あなたが兄上の妻になればそれで良いのです」


天皇にまでなるような人間は利用できるものはとことん利用するのかな。
そこに血は通ってない。

孝徳天皇と結婚なんてできないよ!
あの人、一緒の空気を吸うのもイヤ。

それに、そもそも私は智と結婚してるんだし、智以外なんて絶対にイヤ!


「まさかとは思いますが、断ろうなどと考えてはいないでしょうね?」

うつむいて答えようとしない私に冷ややかな口調で言葉をぶつけてくる。


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