神にそむいても
顔をそらして
「智、きっと私のこと捨てたんじゃないかな?」
と答える。
姫と目を合わせてなんて言えない。
声が震える。
「そんなはずはないでしょう?」
姫の戸惑う声に決意が揺らいでしまいそうになるけれど、
それだけはダメだときつく自分に言い聞かせる。
「ううん、きっとそうだと思う。
だから、私がね、姫の代わりに帝のところにいけばちょうどいいと思って。
私がいけば、姫と皇子はそりゃあ今まで通りとはいかないにしても離れなくてすむんじゃない?
ね、一石二鳥ってヤツ?
わぁ、いい考えだ~、すご~い」
一石二鳥って四字熟語、
この時代にはあるのかな?なんてどうでもいいことを考えながら、
口からすらすらと言葉が出てきた。
目の前に置かれたセリフみたいに、ウソで塗り固められた言葉を吐けば不思議。
ニッコリと笑顔までできる。
姫の顔だってしっかり見れる。
「美姫、本気でそのような事を言っているの?」
おそるおそる姫を見ると、不信感でいっぱいの表情で私を見てる。
私にがっかりしてるのがわかる。
「えぇ、本気よ?」
ニッコリ。満面の笑みを浮かべる。
もうどうでもいい。
智が助かればそれでいい。